小さな学校の 大きな還暦祝い
11月14日は校長先生の60歳のお誕生日でした。当日は出張で学校におられなかったため、前日の13日、職員室で一足早い還暦のお祝いをしました。昼休みが過ぎ、職員室が少し落ち着いたころ、先生方がそっと準備していたシュークリームが机に並び、自然と温かい雰囲気に包まれていきました。
「校長先生、こちらへどうぞ。」と声がかかると、校長先生は不思議そうに席に着かれ、周囲から拍手がわき起こりました。まずはシュークリームをいただきながら、普段の忙しさを忘れて笑顔が何度もこぼれる穏やかな時間になりました。
続いて職員からのプレゼントをお渡ししました。深いエンジ色の特製ポロシャツで、背中には校長先生のお名前にちなんだ「104110(とよひと)」の数字と、大きな背番号「60」。前面にはサッカー好きの校長先生に合わせて「MOCHIMATSU FC」の文字が入れてあり、袋を開けられた瞬間に「いや、恥ずかしい。」と笑顔を見せ、職員室の空気がふっと明るくなりました。
さらに、同じ数字をあしらった特製マグカップもお渡ししました。「還暦」と「104110」の文字が入った記念の品で、校長先生は静かに、しかしとても嬉しそうに何度も頷かれていました。お土産としてケーキも添えましたが、校長先生は「とりあえず持って帰ります。」と笑顔で受け取られ、そっと机の横に置かれました。
お祝いの最後には、校長先生から「今日は本当にありがとうございました。皆さんから祝っていただき、こんなに嬉しいことはありません。60歳という節目を迎えますが、これからも皆さんと一緒に、力を合わせて頑張っていきたいと思っています。日頃から学校を支えてくださる先生方に、あらためて感謝しています。今後とも至らない点があるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。」という丁寧なお礼の言葉が述べられ、職員室は温かい拍手に包まれました。
校長先生の日頃の姿を見ていると、この温かい雰囲気の理由がよく分かります。下校時刻は学年によって異なりますが、それぞれの学年の子どもたちは帰りの会が終わると、ランドセルを背負ったまま自然と校長室へ向かいます。廊下をとことこ歩いてくる子、少し早足でやってくる子、それぞれのペースで姿を見せ、校長室前にはいつの間にか小さな列ができあがります。順番を待ちながらそわそわと体を揺らしている姿は、とても微笑ましい光景です。
そこで始まるのが、校長先生と一人一人との“真剣勝負”です。校長先生は相手の目をしっかり見て「よし、勝つぞ。」と構え、子どもも負けじと本気の表情で手を出します。勝負がつくと、校長先生が勝てば大喜びし、負ければ全力で悔しがる。その大人げない(笑)反応が子どもたちにはたまらず、周囲から笑い声が弾けます。
勝負が一通り終わると、校長先生はその日の勝った回数や負けた回数をふと気にされ、「今日はどうだったかな……?」と周りの子どもたちに問いかけます。すると子どもたちが自然に、「先生、今日勝ち越してるよ!」「あと1回勝ったら五分だよ!」と声をあげ、7人全員が一緒になって盛り上がります。短い時間ですが、子どもたちにとっては一日の大きな楽しみであり、校長先生にとっても子どもたちから元気をもらえる大切なひとときです。校長室前にいつも笑い声が響いているのは、こうした温かいふれ合いが毎日繰り返されているからです。
校長先生の学校への思いは、今年話題になった体育館のペンキ塗りにも強く表れていました。長年の風雨で色あせていた体育館正面の文字を見て、「子どもたちが毎日見る場所だからこそ、きれいにしたい」と自ら筆を取られました。休日や放課後を使って作業は丁寧に進められ、特に「持松小学校体育館」の白い文字は細かな下処理から始まり、小さな刷毛を使って輪郭を何度も重ね塗りする、まるで職人のような仕上げでした。
炎天下の日もあり、汗が流れ落ちるほどの作業でしたが、校長先生は休むことなく筆を進め続けました。地域の方が通りかかると、「あんなに細かい作業、大変だったでしょうね」と驚かれるほどでした。完成した正面の白い文字はまぶしいほど鮮やかで、登校してきた子どもたちは「うわー、きれい!」と目を輝かせていました。学校全体が明るくなったように感じられる仕上がりでした。
また、持松小学校が取り組んできた絵の指導は、子どもたちの大きな成果へとつながりました。構図や色、表現方法を丁寧に積み重ねてきたことで、子どもたちは絵を描くことが大好きになりました。今年、県図画作品展では6年生の女の子が最高賞の県知事賞、4年生の男の子が市長会会長賞を受賞しました。小規模校で複数学年から最高賞が生まれたことは、子どもたちの力はもちろん、日頃の取組の成果でもあります。
さらに、霧島美術大賞展では1年生の女の子が最高賞「きりしま大賞」を受賞し、加えてこの1年生を含む5名が特別賞に選ばれました。子どもたちの作品のレベルの高さが地域でも話題となり、学校全体に喜びが広がりました。
こうして振り返ると、今回の還暦祝いは単に誕生日を祝う場ではなく、職員全員が自然と笑顔になり、日頃の感謝の気持ちをあらためて伝え合う温かい時間になったように感じます。校長先生のこれまでの歩みや、日々子どもたちのために心をくだいておられる姿を思うと、胸の奥がじんわりと温かくなるものがありました。
持松小学校の7人の子どもたちが安心して学校生活を送れているのは、校長先生の温かいまなざしと、ひとつひとつの行動に込められた思いが学校全体をそっと支えているからだと思います。子どもたちが素直に笑い合い、伸び伸びと学ぶ姿の背景には、いつも校長先生の静かな努力があります。
職員だけでなく、地域の皆さんも校長先生の日頃の姿勢をよくご存じです。体育館のペンキ塗りに汗を流す後ろ姿、行事の準備に奔走する姿、誰に対しても気さくに声をかける姿。そのすべてが、持松小学校という小さな学校を大きく支えています。
校長先生、あらためて還暦おめでとうございます。これからも健康に気を付けながら、持松小学校の未来を、そして子どもたち一人一人の成長を見守り続けていただければと思います。7人の子どもたち、職員、そして地域の皆さん——みんなが校長先生の背中をまっすぐに応援しています。私たち職員もまた、力を合わせ、これからの学校を一緒につくっていきたいと心から思っています。














































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